mushco創業ストーリーVol.2 | キノコが持つサステナブル・フォレスト(持続可能な森林経営)への可能性

mushco創業ストーリーVol.2 | キノコが持つサステナブル・フォレスト(持続可能な森林経営)への可能性

※この記事は過去の代表日野のnoteを引用しています。

 

こんにちは、国内初マッシュルームスキン(マッシュルームレザー)特化型ブランド「mushco(ムシュコ)」の代表、日野です。

mushcoは日本の林業・木材産業への貢献を1つの大目的として2023年12月に立ち上げました。

キノコ由来の新素材がどのように日本の林業・木材産業の再生に繋がっていくのか、現在参加しているBundle(バンドル)というプログラムでの学びとともに私の考えをお伝えしていきます。

 

結論(内容まとめ)

現代における林業や森林産業の重要性もしっかりお伝えできるよう、業界のことについても詳しく解説するつもりで書いたのですが、かなりボリューミーな内容になってしまいました。。
なので、先に内容をまとめたものを記載します!

マッシュルームスキン(マッシュルームレザー)がサステナブル・フォレストにつながる理由としては下記のとおりです。

  • 地球温暖化が問題視される現代において、森林が持つCO2吸収効果を最大化させることが重要
  • 一方、日本の森林はその6割以上が伐採期を迎えておりそのCO2吸収の能力を活かしきれていない
  • 上記の問題を解決するためには林業業界の採算性を向上させるとともに、森林を適時伐採〜再植林していくことが必要。しかしながら、建築材などの既存の木材利用用途は需要減少となってきているため新しい木材利用用途の創出が求められる。
  • マッシュルームスキン(マッシュルームレザー)は、その素材のもととなるキノコの原料はおがくず(木材)であるため、キノコスキンの普及・需要拡大を通して新しい木材の利用用途拡大に繋げられる他、木材価値の向上にも貢献できる可能性がある。

それでは、それぞれの内容について詳しく解説していきます。

 

はじめに

地球温暖化の原因となる温室効果ガス(GHG)の実質的排出ゼロを目指すカーボンニュートラル。日本政府は、パリ協定が掲げた世界の平均気温上昇抑制と今世紀後半のGHG排出実質ゼロという目標を達成するため、2030年までにGHG排出を2013年度比で26%削減する目標を設定。2020年10月には、2050年のカーボンニュートラルを目指すことを当時の菅義偉首相が宣言しました。 そして、このような世界規模の脱炭素社会への動きやESG投資の加速などにより、かつてなく注目を浴びているのが森林資源や林業産業です。

 

しかし、現在、日本の林業は、都市への一極集中と少子高齢化が招いた「担い手不足」、グローバリゼーションや木材の代替材の流通による「国産材需要の低下」、加えて木材サプライチェーンの複雑化・不透明さに伴う「原木価格の下落」など、多くの課題を抱えています。結果、伐採で得られる収益よりも、再造林にかかる費用が高い構造となり、補助金頼りの産業になっていると同時に衰退が進行しています。林業の衰退は、その国土の7割が森林を占める日本にとって、中山間地域経済・地方全体の衰退を意味すると同時に、CO2吸収源や水源涵養、生物多様性の維持など、環境保全の役割を持った森林そのものの維持の難しさに繋がります。

 

国際社会の目標である、カーボンニュートラルを実現するには、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度を下げるために、森林の適切な維持と、年々力を失ってきた林業の再生が不可欠です。

 

ではどうしたらいいのか?

 

私はこのような現代の日本の林業・木材産業の危機に対してキノコ由来の新素材「マッシュルームスキン(マッシュルームレザー)」が一筋の光明となりうると思っています。


どのように繋がっていくのか、その内容を説明していきます。

 

Bundleとは

Bundleとは、2024年7月から開講している、日本木材青壮年団体連合会主催の林業・木材業界の起業家を輩出する起業家養成塾プログラムです。詳しくはこちらをご覧ください。

日本の林業・木材業界に強い関心を持ち、当事者意識を持って行動したいと思う方々に向けて、少々複雑で課題がわかりづらい日本の林業・木材業界について詳しく解説して頂いています。
こちらのnoteは、そこでの学びで特に大事だと思ったポイントをピックアップして書いています。

 

森林が持つ多面的機能ついて

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引用)  齋藤木材工業株式会社「森林の働きとは?森林が果たす役割について詳しく紹介 」

森林は、国土の保全、水源の涵養、地球温暖化の防止、生物多様性の保全、木材等の林産物供給などの多面的機能を有していて、その発揮を通じて国⺠生活に様々な恩恵をもたらす「緑の社会資本」と呼ばれています。

 

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引用) 林野庁「森林・林業・木材産業の現状と課題(令和6年7月1日)」

そして、パリ協定によりCo2の削減量は2030年度までに46%を減らそうとなっています。
また、同時に森林の吸収量の目標も約2.7%と定められています。

この通り、森林が持つ公益的機能に加え、地球温暖化対策、といった観点でも非常に脚光を浴びるようになってきました。
そのため現在では、林業・木材産業関係者に加え、様々な主体による森林との多様な関わりが広がりつつあり、森林の整備・保全や地域活性化に繋げていこうという意識が高まってきています。

 

日本の森林産業の概要と問題について

日本は国土の約3分の2を森林が占める世界有数の森林大国で、森林面積は人工林を中心に毎年約6千万㎥増加し、現在では約56億㎥あると言われています。

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引用) 林野庁「森林・林業・木材産業の現状と課題(令和6年7月1日)」

そんな森林ですが、人工林の6割が50年生を超えて成熟し利用期を迎えており、また、老いた樹木はそのCO2吸収効果も急激に減少していくことから、木材資源を「伐って、使って、植えて、育てる」という資源の循環利用をより促進させていくことが重要となってきています。

 

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イラスト:林野庁「森林・林業・木材産業の現状と課題(令和6年7月1日)」をもとに作成。値は施業地1ha単位の試算。

一方、担い手不足、高い再造林コストによる不採算性、既存の建築材などの木材需要は年々減少、といった背景を受け、現在は木材を刈って得られる収益より再造林にかかるコストの方が大きくなってしまっており、やればやるほど赤字、という産業構造になってしまっています。
そのため、現在再造林にかかるコストを削減するとともに様々な形での国産材の需要増加、価値向上が求められています

そんな現代の社会課題に対して、「国産材の需要増加、価値向上」という観点にマッシュルームスキン(マッシュルームレザー)というアプローチで寄与するべく、国内初マッシュルームレザー特化型ブランド「mushco」を立ち上げました。

 

マッシュルームスキン(マッシュルームレザー)とは

マッシュルームスキン(マッシュルームレザー)とは、キノコの菌糸体から作られるレザーライクな新素材でヴィーガンレザーの1種です。我々が良く食用として食べるキノコは"子実体"と呼ばれる部分なのですが、それ以外にもキノコは菌糸を木や土に張り巡らせながら育ちます。この繊維状の菌糸をレザーに応用したのが、マッシュルームスキン(マッシュルームレザー)です。

 

マッシュルームスキン(マッシュルームレザー)は原料に石油を含まず、化学物質の使用を最小限に抑え製造可能。
動物性の天然皮革や合成皮革に比べ製造過程での環境負荷が非常に低く、動物愛護を考慮した素材としてファッション業界やインテリア業界などで昨今注目されています。
※さらに詳しくはこちら

 

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そして、天然素材ならではの優しい質感と独特な柄が特徴的で、特に柄に関しては"1つとして同じ柄がない"という特徴があります。

菌糸からキノコ(子実体)が生えようとした跡が素材ごとに独特、そのため最終製品もオンリーワンの柄になります。自分だけの1点物のアイテムとなることから愛着が湧くのが素敵なポイントです。

 

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そんな素敵な素材であるマッシュルームスキン(マッシュルームレザー)ですが、その普及を後押しする時流としては、おもに下記の3つが背景としてあります。

①動物愛護(アニマルウェルフェア)
動物愛護の意識が高い欧州等で、家畜の苦痛を減らそうとする「アニマルウェルフェア」と呼ばれる意識が増加
②脱石油
石油由来のフェイクレザーからの脱却
③林業・木材産業業界への貢献
キノコを育てるために国産材のおがくずを利用▷レザーの普及を通して日本の木材需要増加・価値向上へ

 

①,②は特に欧州系で先行して進んでいる価値観で③は日本固有かと思われますが、今回はそんな③についてフォーカスしていきます。

 

マッシュルームスキン(マッシュルームレザー)と日本の林業・木材産業へのつながり

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マッシュルームスキン(マッシュルームレザー)が出来るまでの流れ

上述の通りマッシュルームスキン(マッシュルームレザー)は、キノコの菌糸体から出来ているわけですが、実はそのキノコを育てるためにはおがくず(木材の粉)などの有機物が原料として使われます。
※おがくず…木材の粉で、製材工場で鋸挽きされる際にできる鋸屑のこと。キノコ栽培のためには一般的にはおがくずは原木から専用のおがくずが作られます。

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そのため、マッシュルームスキン(マッシュルームレザー)が普及しレザーの需要が増加すれば、その原料となるおがくず、つまり木材の需要も増加し木材の価値向上に繋がる可能性があります。

わたしは最初に国産マッシュルームスキン(マッシュルームレザー)を知り、その原料はおがくずであることを確認した際、大きな可能性を感じました。

キノコ(木材腐朽菌)は、自然界で広葉樹や針葉樹を含む多様な樹種を栄養源として成長します。
マッシュルームスキン(マッシュルームレザー)は様々なキノコを素材として利用できる可能性があり、そのため多様な木質資源を有効活用できるポテンシャルがあります

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このため、マッシュルームスキン(マッシュルームレザー)が今後のサステナブルフォレスト(持続可能な森林経営)において重要な役割を果たすと確信しました。そこで、この革新的な素材を広めるため、国内初の試みではありますが、マッシュルームスキン(マッシュルームレザー)に特化したブランド事業を立ち上げることを決意しました。

林業・木材産業は、直近はAIやIoTを活用したコスト削減が進みやすいでしょう。一方で、中長期で見たときは木材のブランド価値を向上させていくことが間違いなく重要です。
5年、10年単位で見たときに間違いなくマッシュルームスキン(マッシュルームレザー)の存在が林業業界に寄与している、となるべく今道を切り開くべく進めていきたいと思っています。

 

mushcoについて

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mushcoは国内初のマッシュルームスキン(マッシュルームレザー)特化型ブランドです。
2023年12月にブランドローンチをしました。

サステナブルな素材であることだけでなく、マッシュルームスキン(マッシュルームレザー)が持つ1つ1つの柄が凹凸を自然素材ならではの個性として捉え、その良さを活かした商品を開発するとともに、その商品を手にとり使用して頂く方の個性や多様性を尊重する存在でありたいと思っています。

2024年4月には初回製品である名刺入れのクラファンを実施してたくさんの方にご支援及び反響を頂きました。

 

現在は、より多くの方にマッシュルームスキン(マッシュルームレザー)製品を手に取って頂けるようさらなる商品開発に取り組んでいます。

環境に優しいマッシュルームスキン(マッシュルームレザー)という素材を使った商品を開発されサステナブルな社会に繋げるとともに、製品の持ち主が個性や多様性を尊重され、心地よく幸福に感じられることを目指して、「サステナブルとウェルビーイングを両輪で実現する」ことをミッションに掲げています。

 

最後に

ここまでお読み頂きありがとうございました。
今後も裏話や、mushcoに対する想い、ブランドの日々の成長ストーリーを書いていきます。
ぜひ次回の内容も楽しみにしていてください🍄

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